ハプスブルク王朝


ハプスブルク家、その後(1919〜)


 第一次世界大戦によってヨーロッパの勢力地図は大きく変わりました。ヨーロッパの列強だったオーストリア・ハンガリー二重帝国を始め、ドイツ帝国、オスマン帝国、ロシア帝国は地図から消えました。
 
 新たにソ連が誕生し、1795年以降地図から消えていたポーランドが復活します。中央ヨーロッパでは、ハプスブルク家のオーストリア・ハンガリー二重帝国が解体され、新たにチェコスロバキア、ユーゴスラヴィアが誕生し、トランシルバニア地方はルーマニアに割譲されました(地図の緑色の部分が、かつての帝国領土)。
 
 そして、史上初の国際平和機構と言われる国際連盟が設立されました。
 

第一次世界大戦後の中欧
第一次世界大戦後(1918年)の中欧
ウィーンに建つ国連ビル →
ウィーンに建つ国連ビル 
 
 1918年11月12日に成立したオーストリア共和国は、翌1919年4月に「ハプスブルク法」を成立させて、ハプスブルク一族の財産没収と国外への追放を決定します。
 
 カール1世は、ハプスブルク法が正式に成立する直前の3月にスイスに亡命しましたが、1921年にハンガリー王への復位を試みます。ハンガリーは1920年のトリアノン条約で国土の7割と人口の6割を失ったことに不満を持ち、強大だった頃のハンガリー王国を懐かしむようになりました。この状況を見たカール1世は、二度に渡ってハンガリーに乗り込みましたが失敗に終わりました。カール1世は、一連の行動を危険視した列強によってマデイラ島へ配流され、肺炎のため34歳で亡くなりました。
 
 一方、共和国として再スタートしたオーストリアは、第二次世界大戦に先立つ1938年にヒトラー率いるナチス・ドイツに併合されてしまいます。第二次世界大戦(1939〜1945年)では連合軍の爆撃で甚大な被害を蒙り、ナチス・ドイツの敗戦後は、ソ連、アメリカ、イギリス、フランスの4ヶ国によって分割統治されます。
 
 1955年、オーストリアは国家条約に調印、永世中立国として独立を回復します。また、第二次世界大戦の勃発を阻止できなかった国際連盟に代わって1945年に国際連合が設立され、ウィーンに国連ビルが建設されます。ウィーンは、ニューヨーク、ジュネーブに次ぐ国連都市となりました。
 
皇帝カール1世、ツィタ皇后、オットー(ハンガリー、ブダペストの歴史博物館)
カール1世、オットー、ツィタ皇后
 皇帝カール1世の死後、ツィタ皇后や長男オットーは、スペインやベルギーに移り住みながら政治活動を続けます。オーストリアがナチス・ドイツに併合されたときはアメリカに渡ってオーストリアの解放を訴えました。
 
 また、1920年代に始まったヨーロッパ統一を目指す汎ヨーロッパ運動では総裁を務め、欧州議会の議員も務めました。
 
 オットーの母ツィタ皇后は1989年にスイスで亡くなりました。ウィーンのシュテファン大聖堂で葬儀が行われ、最後の皇后として歴代のハプスブルク家の人々が眠るカプチナー教会に葬られました。オットーは2011年に98歳で亡くなります。彼もまた母親と同じく、ウィーンのシュテファン大聖堂での葬儀の後、カプチナー教会に葬られました。
 

1919年 3月、皇帝一家がスイスへ亡命
4月、オーストリアでハプスブルク法が成立
6月、ドイツ政府が「ヴェルサイユ条約」に調印
9月、オーストリア政府が「サン・ジェルマン条約」に調印
1920年 1月、国際連盟設立
6月、ハンガリー政府が「トリアノン条約」に調印
1921年 3月、カール1世がハンガリー王への復位を企てるが失敗
10月、カール1世が再びハンガリー王への復位を企てるが失敗
11月、皇帝一家がマデイラ島に追放される
1922年 カール1世、マデイラ島で死去
1938年 ナチス・ドイツがオーストリアを併合
1939年 第二次世界大戦(〜1945年)
1945年 10月、国際連合設立
1955年 独立の調印式が行われたベルヴェデーレ宮殿(オーストリアのウィーン)オーストリアが永世中立国として独立
(写真は独立の調印式が行われたオーストリア、ウィーンにあるベルヴェデーレ宮殿
1956年 ハンガリー動乱
1968年 「プラハの春」の舞台となったチェコ、プラハのヴァーツラフ広場プラハの春
(写真は「プラハの春」の舞台となったチェコ、プラハのヴァーツラフ広場
1989年 ウィーンのカプチナー教会にあるツィタ皇后の墓3月、ツィタ皇后、死去
(写真はウィーンのカプチナー教会にあるツィタ皇后の墓)
11月、ベルリンの壁が崩壊
12月、ソ連が崩壊
1993年 1月、チェコスロヴァキアが分裂
11月、欧州12ヶ国によるEU(欧州連合)が発足
1995年 オーストリアがEUに加盟(参加国は15ヶ国に)
2004年 ハンガリー、チェコ、スロヴァキアなどがEUに加盟(参加国は25ヶ国に)